お疲れ様です
新緑の力を感じる5月・6月の頃
日本料理屋さん初め様々なところで「季節の色:翡翠(ひすい)」を拝見します
これは鉱石の翡翠石の色に肖った(あやかった)名称を使って命名されています
この記事では、仕込み後に茶色にくすんだり、緑色が飛んだりなどで失敗をしない方法を紹介しています、これは私の失敗談を元にもしており、原因と対策をまとめたものになっています
様々な状態からの対処法を知っておき、美しく美味しいい料理をゲストに楽しんでいただきましょう!!
そのそも何故、黒くなるのか?
茄子は基本的に黒色から紫色をしていますが、この翡翠茄子という調理法では皮と身(白い部分)の僅かな間にある緑色を活かした技法です
緑色は以前に「青寄せ」でも紹介したことがある、クロロフィルと言われる色素です
この色素は葉物野菜などと同じく、加熱しすぎると薄れてしまいます。また、光に当てすぎると葉物が黄色くなるように同じく失われてしまします
そして、アクが回って黒くなる原因は茄子の白い部分に含まれるポリフェノール化合物のクロロゲン酸という物質です
これはコーヒーに豆に多く含まれるもので焙煎すると豆が茶褐色に変化するのが頷けます
(補足:ナスニンというのもポリフェノール成分ですがこれは皮に含まれています)
他にも、牛蒡・じゃがいも・人参・バナナ・リンゴ・そしてブルーベリーなどと、言われてみれば黒くなるヤツシリーズなので納得すると思います
さて、前置きが長くなりましたが「翡翠茄子」にとっては不要なこのアク(苦味成分)ことクロロゲン酸を日本料理の引き算と言われる調理法で処理をします
これを上手に引き出し、緑の色素を残すという言葉にすると難解な作業でありますが
昔から先人達の教えにはこれが全て含まれており、実に理にかなった方法になっております!
凄っ!
丁寧な下処理の方法
さて先のクロロゲン酸(以下、アクと統一します)はどういう性質なのか?!
今回のアクは水溶性であること、そして空気に触れて酸化する事これを元に書いていきます
細かい事ですが、こうしないと仕上がりの色艶に影響します
今回は米茄子を使っています(ヨーロッパに千両茄子の出回りが無い😭)なかなか大きいので本当に難しいですが日本では長茄子や千両茄子がおすすめです
4、このように太い部分に菜箸や細い打ち抜きなどで中心を貫通させておきます、こうすることで中からもアク抜きが出来て火の通りが均一になります、そして先の写真3のミョウバン水5分以上は漬けておきます、こうして茄子の水溶性を利用してアク抜きになります
5、次の工程は油で揚げて火を入れます、こうして空気による酸化と加熱を同時に行います
よく高温であればあるほどいいともされてますが、茄子が焦げすぎてしまいます。
これはメラノジンとうい褐色物質によるものでわかりやすところでは、パンや肉などが茶色くなる「メイラード反応」です
6、調べによると155℃あたりから活発になります
私の体感的には145〜150℃の油の温度でも充分に火を入れることができます。
ですが5分程は掛けてしっかりと全体に火を通しておきましょう
また、この時に茄子が浮いてきて空気に触れるのでよく回しながら扱います
皮を剥いて処理をする翡翠茄子の方法もありますが、この時にも油の温度管理がものを言いますし、皮剥きに技術が若干必要です
少しつまんでみて、じんわりと萎むのが確認できたら火の通った合図です、少しでも当たるような触感ならもう少しだけ揚げましょう
7、氷水に漬けて急冷却します
熱いですが表面はすぐに冷えるので頭の方から皮をなるべく早く剥いていきます、この時の注意点は皮付きのまま氷水に長く漬けない事です
今度は皮のポリフェノール成分であるナスニン(紫色成分)とヒアシン(赤色成分)が身に着いてしまい緑がくすんでしまいます、これら水溶性質が裏目に出るのでここも大事なポイントです
握り過ぎると熱々水分が中から出て流石に熱いので注意します
8、先の「3」のところで包丁を深く入れ過ぎるとこの時から身割れの原因ともなります
9、そしてしっかりと冷却できたら余分な水分を絞りましょう、この時に芯が黒っぽく見えれば次の日のは茶色く減色しています
じっくりと押しすぎてペタンコになっても大丈夫、出汁に漬けて戻しましょう
(繊維が潰れるほど絞ってはよろしくありません!)
10、下味漬の段階では醤油は控えます、一晩漬けたら完成です
ヘタを残しているのは身崩れの防止の為なのでどちらでも構いません、その後料理にあった用途で切り出し、味付けをしてください
大前提ですが、茄子は新鮮な物でなければそもそもクロロフィルが減っているので色が出ません!!
しっかりとアクを止める、流すという下処理をしないと色が悪くなります!!
柔らかいので身崩れなどを意識して扱いを丁寧にしないと仕上がりに影響します、美しさは日本料理の大切なポイントになります!
まとめ
今回の調理法に関しては厄介者扱いの「アク」ですが、抗酸化成分もあり決して体に悪い物ではありません
栄養価的にうんぬんという意見もありますが、お店で「見た目にも美しい料理を!」としてならこうした処理をして、引いてもらうことでお客様に楽しんでもらえます
新鮮な茄子選びが第一
アク抜き・止めを第二
火入れの第三を的確にしましょう
よく食材を見分けて丁寧な仕事を行えばプロでなくても作れます!
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