先日のスタッフとの会話から
「日本料理の陰と陽とはどんなもの?どうしている?(ドイツ人です)」と質問されました
これを機に勉強です
今回の記事では要点のみをまとめています
料理屋さんでこう言ったネタになった場合のテンプレとして覚えておいても良いかと思いますし、合わせて自身の料理やお店のスタイル
想いやこだわりなんかも伝えれるかと考えます
当時の教えでは、「これはこう!」みたいな感じでもあった為か、よく調べないまま近年まで過ごしてたことに少し勿体なく思うこの頃です
では、この機会に一緒にサクッと学びましょう!
日本料理の基本
そもそも陰と陽と何なのか?
「陰陽五行説」という言葉を聞いたことありませんか?そもそも中国から伝わった物で
「陰陽説・五行説」が一緒になった物
陰陽とは
光と影、太陽と月
(今の馴染で言えば日・月曜日)
など全てに表裏が伴う事
五行とは
5つの構成(同じく火水木金土曜日)によって周り転じてなされている事
良い悪いではなくて物事の神羅万象とは、このように互いに影響する表と裏があるという思想や考え方の事です。
映画や何かで「陰陽師・安倍晴明」は聞いた事あるかと思います、これまさにそれ
(陰陽五行説の使者・教えを説く人)なんです
当時に官職とされていて政治的なところでも多大な影響力を持つほど権力の大きいポスト、当時の一般人は知ってても法律的に言えなかったとか
こう言った事柄もありこれらが「神格化」され、回り転じて今日まで伝わっています
食材、料理の向きや表裏?
では、この陰陽五行説がどうのように料理に影響してきたのか?どのように陰陽と結びつくのかです
先の記述で神格化というワードがあります、古来日本での神事の一つに「お供え」があります
本来、供物(くもつ)と言われて、神前・仏前・はたまた故人に「おそなえ」する物、これが最上位という考え方にあやかって構成されます
お供えする料理には表裏があって、向き・方角・品数・調理法・時間や時期も関係します
難しいですよね、、、
とは言えこういう物(事)の「教え」が
日本料理の基礎にもなっているということを
踏まえて以下個別に見ていきましょう
器・盛り付けの陰陽
さてようやく料理のテリトリーです
現在の「日本料理」が確立されたのは「室町時代から江戸時代」とされています
年数にかなり幅がありますが
ほとんどが江戸時代
その発展の名残が現代でもさまざまなところで生かされています
各所に職人なる、追求する先人達が鎬を削ったため今の日本料理の原型が確立されました
この時の言葉になっていない「これはこう」の教えは陰陽五行説に基づいていた、とこのブログの記事制作のおかげで少し勉強になりました
ありがたや・・
さてだいぶと端折りますけど、『これはこう』
この不思議な言葉には多くの意味が込められています
盛り付けにおいては立体的な高低がある、左右非対称、正面裏面がある、季節感(春秋)、彩りと影、空間と余白があり、こちらの面が上で、これが表で、こっち向きで、盛り付け方向はここから、何種盛り、何品目と全てこれに繋がり基本という位置付けで構成されています
更に、想いや伝承・伝統・地域の個性・憧れに魅力がこうして口頭と見習うことで伝えられています、若干の様変わりはあれど受け継がれていたことに感動しました
言ったら怒られそうですが料理人はほとんど
伝記や論説で勉強をしていないと思います!!
こうして残る伝統や伝来は日本人の美意識としても大切にしたいところです
包丁の陰陽
和包丁は片刃(左利き割愛します)、食材を切ってしのぎの方が(右)陽、逆が(左)陰です
こうして文字にすると「影って良く無くね?」ってなりますが、そういうことではないです
言い方を変えて「表・裏」として向きで考えましょう、切り出してどちらが綺麗な面であろうか?
世界に誇る日本刀(和包丁)の切れ味で作った物(切り出した物)
裏があるから表が映えるそんな教えも当たり前に伝わっております。
お造りの「平作り・へぎ作り」等、これらの盛り付けをする時にどのようにしますか?
1種盛、3種盛、5種盛、なかなか無いですが7種盛の時に、切り出したこの向きの断面が綺麗で角が立ち全体が美しく見えるから、これが感覚の基礎となります
「これはこう」と教えて頂いたことが、先の時代から受け継がれ日本料理人には身についているのです
平作りの面、これを見えるように盛りつける、これ基本なんです。
また寿司ネタをヘギで作った場合のどちらが上か?おのずと右となるでしょう、切り出して持った手を返すこっちが表(陽)になります
そして器にもこれらが適用されてます
凄いですよね!!
盛り付けの陰陽
一汁三菜、二汁五菜、果ては三汁七菜って聞いたことあるでしょうか?
日本料理店では献立と品数においてもこれが基本的に守られています
(補足:四菜偶数の4は忌み嫌われるので使いません)
丸皿と角皿(ラウンドとスクエア)様々あるように、なんとこれにまで関係します
丸皿(陽)・角皿(陰)これに関してコメントすると、極端ですが四角いものを四角く切って四角い皿に盛り付けて四角い膳に出す事に違和感がありませんか?ということです。
言い換えましょう、四角い料理を切り出し丸系の皿に持って、四角いお膳に出して、時計回りに食べてともなればしっくりときます、これが日本料理人の感覚で備わってるんですね
日本料理は「観て・感じて・食べて・風情をも感じれる」ので、ここはしっかりと守りたいところです
陽(偶数) | |
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丸(八角以上が丸とされる) 表面 凸(前に出ているもの) 浅い器など 温製・体を温める野菜 (ねぎ、ごぼう、れんこん、かぼちゃ、生姜、赤唐辛子など) 向こう(奥)側 右巻き(妻折り) 動きがあるもの 丸のまま 海の魚(鯉以外:鯉は最上級とされているから) 海の魚 握った包丁の右側 | |
陰(奇数) | |
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三角・四角・五角まで 裏面 凹(へこんでいるもの) 深い器など 冷製・体を冷やす野菜 (白菜、きゅうり、トマト、茄子、ゴーヤ、おくら、大根) 手前側 左巻(逆さ巻) 静寂 切り身 川魚 川の魚 握った包丁の左側 | |
確立された日本料理の五味五食五法そして・・
以下の重要な『五』に関しては日本料理が発展し確立された構成を持ってなされる事柄であり
五行説に通づるところから姿形を変え伝わっています
五味
日本料理における五味とは
「甘味、塩味、酸味、苦味、旨味」
であります
調べによっては
甘味=土(脾)
塩味(鹹味)=水(腎)
酸味=木(肝)
苦味=火(心)
辛味=金(肺)
となっており更にこれに「うま味」が加わって六味ともされています
そもそもこれは東洋医学の「五行学説」であり漢方の基礎概念であるために違った表現になるのです
五色
日本料理では青(緑)、黄、赤、白、黒(深紫)の五色が盛り付けにおける配色の基本色であるといわれており、5つの色の食材を使った伝統料理も数多く存在しています。
青(緑)色は、肝臓の機能を高めて血液循環を促進し代謝作用を助けます。疲労回復、免疫力強化の作用もあります。主な食材はほうれん草、枝豆、緑茶など
-赤色は血を補い、心臓の機能を高めて動悸を予防します。虚弱体質や手足の冷えにも効果があります。主な食材は、小豆、トマト、にんじんなど
-黄色は、脾臓の機能を高めて新陳代謝を活発にします。主な食材は大豆、かぼちゃ、とうもろこしなど
-白色は、肺機能の強化のほか、胃腸機能の改善に効果があります。主な食材は米、かぶ、大根など
-黒色は、腎機能を高め排泄作用を強化します。
精進料理×五味五色ーLapiholiのサイトより引用
五法
五法は調理法の事「生」(切る)、「煮る」、「焼く」、「蒸す」、「揚げる」です。
基本的な会席料理では、これらの調理方法で作られた料理がこの順番で提供されます
現在において「五味五食五法」という言葉は最近では広く知られてきました
(調理師試験にも出てきます)
そして5つの適度な状態「五適」・「五感」
会席料理をいただくときの日本料理のマナー「心得」として以下を持って楽しむ事も加わります
五適・五感
おもてなしとも言い換えられ
料理全体の心づかいの事
適温=料理の温度、温かいものは温かいうちにいただくなど
適材=年齢に応じた食材・など
適量=文字通り質量など
適技=凝りすぎないことなど
適心=雰囲気など
視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚
暦(こよみ)における五とは
陰陽と同様に1月(陽数)があって2月(陰数)があるという様に、暦にも影響してます
- 1月7日 人日の節句 ・・・「七草粥」
セリ・ナズナ・ゴギョウ・ハコベラ・ホトケノザ・スズナ・スズシロと呪文のように覚えます - 3月3日 巳の節句 ・・・「桃の節句」
ひなあられ、ちらし寿司、菱餅、皇室の御式を模したひな祭りですね - 5月5日 端午の節句 ・・・「菖蒲」柏餅やちまきが登場します
男児の健やかな成長を祝い五月人形なども飾ります - 7月7日 七夕の節句 ・・・「竹」
天の川や笹短冊は有名ですが、以外に知られていない素麺を食べることです - 9月9日 重陽の節句 ・・・「菊」
陽数(奇数のこと)の中で縁起の良い数字で一番大きい9の月、収穫など大変めでたさを祝います
料理におては「菊」を使う様々な料理があります
よって日本料理においては9の月が最上とされ9月9日の重陽の節句はより華やかな「お節」となります
ある日の盛り付けから
この記述では会席料理の前菜を例にします
会席料理の前菜・または八寸と言われる料理には先の陰陽と五の構成などが表されていると言います
左奥から高い器を配置しました、色の強い黄色い器も奥に配置して盆下地の黒との対比、手前の木の葉皿に7種盛り、中秋の名月と季節物にそれぞれ見立てた食材など小さいながらも個性ある取り合わせにと心がけました、そして9品です
栗見立て丸十蜜煮 牛八幡巻 蟹と菊花みぞれ酢よせ
月見団子田楽 吹き寄せ煎餅 松葉茶蕎麦
また、上記に足りなければ器の色や懐紙などでも補われることもあります
価格:1870円 |
まとめ
日本料理とは中国伝来の陰陽五行説から伝わった教えと考え方をもとに日本独自に変化にて江戸時代に発展し確立しました、風情を味わう日本人独自の価値観で作られた伝承と伝統。
一年に5回ある節目の節句に重きを置いた料理人の「受け継ぎ・引き継ぎ」が今日まで伝え、教えられています。
現在の日本料理店ではこういた教えやいわれを基に、各店の料理構成とサービス、スタイル、何より来客のお客さんが楽しんでいただけるように文字通り鎬を削っておられます
AIやテクノロジーのその時代に適応て、様変わりしながらこうした基本は今後も変わらないと考えます、何より衣食住の一つ「食」です。
気分や雰囲気、信頼によっても満足度は変わるので、そう言った事も含め考えてます
先人たちのように基本的に引き継ぎ、それぞれの料理の型、それぞれの表現でいいと思ってます
今回もありごとうございました、追記あれば随時更新いたします
お気付き等、不足に関してはご指摘くださいませ
今回もありがとうございました
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