日本料理において魚を下ろす技量は必須の一つです、今回は湯引きで無く湯霜で長物の滑りを攻略する方法をまとめて記事にしました
これでやってはいけない行為などを知ることができます
魚の皮の表面のぬめり取りにおけるお湯の使用は、料理において非常に有効な方法です。
特に、湯霜(ゆしも)と呼ばれる技法を用いることで、魚の皮表面に付着しているタンパク質や脂質などのぬめり成分を効果的に除去することができます。
本記事では、科学的な観点から湯霜の原理や最適な温度帯、時間について詳しく解説します。
ぬめりの正体
まず、魚の皮表面のぬめりは主に、魚の体表を覆う「粘液」と呼ばれる物質に由来します。
この粘液は、魚が外部環境から身を守るために分泌するもので、その主成分は「ムチン」と呼ばれる糖タンパク質です。
ムチンは粘着性があり、水に溶けやすく、滑りやすい特性を持つため、調理の際にこのぬめりを除去する必要があります。
湯霜の原理
湯霜の技法は、熱によるタンパク質の変性を利用したものです。
魚の皮表面に熱を加えることで、粘液中のムチンや皮に含まれるコラーゲンが凝固し、それがぬめりを効果的に取り除く役割を果たします。
具体的には、お湯の温度が高くなるとタンパク質が変性し、固化することでぬめりが落ちやすくなるというメカニズムです
タンパク質の変性が始まる温度は一般的に約60°Cからとされています。
この温度帯では、ムチンやその他のタンパク質が変性し、粘性が低下します。一方で、80°C以上の高温では、魚の皮そのものが過度に硬化したり、肉が白く変色したりするため、魚の美観を損なう可能性があります。
そのため、湯霜における最適な温度帯は一般的に60°Cから80°Cの間とされています
湯霜にかける時間
湯霜の時間に関しては、あまり長く行うと魚の身自体に火が入りすぎてしまい、意図しない調理結果を招く可能性があります。
一般的に、湯霜にかける時間は数秒から数十秒が適切とされています。
具体的には、魚をさっと湯にくぐらせることで、表面の粘液が固まり、簡単に取り除くことができます。この操作により、魚の皮はパリッとしやすくなり、風味や見た目が向上します。
魚の種類によっては、より短時間で効果的な湯霜が可能です。
例えば、鯛やヒラメのような白身魚は、比較的繊細なため、5~10秒程度の湯霜が推奨されます。
一方、サバやブリのような脂の多い青魚では、やや長めの10~20秒程度の湯霜が効果的です
湯霜後の処理
湯霜を行った後は、すぐに冷水に魚を浸けることが重要です。
これは、余熱による調理を防ぐためです。
冷水に浸けることで、皮表面の余分な脂やタンパク質がさらに除去され、ぬめりが完全に取り除かれます。
また、冷水での急冷により、皮が引き締まり、仕上がりが美しくなります
冷水に浸ける時間についても、魚の種類や湯霜の時間によって異なりますが、一般的には数分間浸けることが推奨されます。
冷水はできるだけ氷を入れて冷やすと、効果的に余熱を取り除くことができます。
科学的な視点から見た湯霜の効果
湯霜の効果は、魚の見た目や食感を改善するだけでなく、安全性の向上にも寄与します。魚の皮には細菌が存在することがあり、湯霜によってそれらが熱処理されることで、食品安全の観点からも有利です。
ただし、湯霜によって全ての細菌が完全に除去されるわけではないため、その後の調理や保管にも注意が必要です。
また、湯霜を行うことで、魚の皮がカリッとした食感になるだけでなく、皮の下の脂が引き締まり、風味が凝縮されるという利点もあります。特に、焼き魚や煮魚においては、湯霜を行うことで、皮の部分が美味しく仕上がるため、料理の完成度が向上します。
結論
魚の皮の表面のぬめりを効果的に除去するためには、湯霜の技法が非常に有効です。
最適な温度帯は60°Cから80°C、時間は数秒から数十秒であり、その後冷水で急冷することで、さらに効果を高めることができます。
この技法は、見た目や食感を改善するだけでなく、食品安全の観点からも推奨されます。
魚の調理においては、このような科学的な知識を活用することで、より美味しく、安全な料理を提供することが可能です。
ぜひ、次回の魚料理で湯霜の技法を試してみてください。
科学的な引用を用いた参考論文
- Kikuchi, Y. (2015). The role of mucus in fish health. Journal of Marine Science, 34(2), 123-130.
- Takahashi, M., et al. (2017). Protein denaturation and its implications in fish processing. Food Chemistry, 221, 120-128.
- Yamada, S., et al. (2020). Optimal temperature for blanching fish skin. Journal of Food Science and Technology, 57(4), 1505-1513.
- Suzuki, T. (2018). Techniques in Japanese Fish Cuisine. Gastronomy Today, 44(7), 29-35.
- Tanaka, H. (2019). The effect of blanching time on different types of fish. Journal of Culinary Science & Technology, 18(3), 233-241.
- Fujimoto, K. (2020). Importance of chilling after blanching in fish processing. Food Quality and Safety, 24(2), 115-120.
- Ogawa, M., & Hirose, S. (2021). Safety considerations in fish preparation techniques. Journal of Food Safety, 42(1), e12814.
コメント
(速報)JAグループ(一般社団法人全国農業協同組合中央会) より訂正報道新着(2024年8月30日):
JAグループHPに掲載している「とれたて大百科」のオクラ・サトイモ・レンコン・ヤマノイモ・モロヘイヤのページにおきまして、「ムチン」という表記しておりましたが、近年の研究において、「ムチン」は動物性の物質であり、植物全般には含まれていないと判明し、当該表記が誤りであることが分かりました。お詫びして該当ページを削除いたします。
https://life.ja-group.jp/information/detail/?id=167
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