プロの料理人が教える仕事シリーズ
おはようございます
今回は数ある天ぷらネタから水分の多く難しいとされる、帆立貝柱の揚げ方に関してのひと工夫加える調理行程の記事です
この記事で「天ぷら油の急激な劣化・揚げた後の水分の流出・多くの客数の対応・もちろん家で食べる時」の悩みが解決します
昨今、日本における処理水を巡る風評被害のニュースを目にします
基準値をオープンにしているにも関わらず外交的に輸入の制限を設けるなどされていて、とても気になりました、日本の水産物のありがたさをよく知る者としては心が痛みます、「#食べるぜ日本」精神を繋げませんか
帆立貝柱や含まれる水分と酵素(焦げる原因)
さて、まず帆立貝柱を常の通りにそのまま天ぷらにしてみましょう(普通に打ち粉して衣に潜らせ)
火の通り具合でも変わりますがパチパチと跳ねて火傷しそうで、ギリギリ我慢できない「イラッと」する温度で攻撃してきます
これほんま嫌い(笑)
そしてあげて2分もするとお皿に水分(帆立貝柱の旨みエキス)が流れて天紙(天ぷら用の油取り紙)がベチャベチャになります
ホテルの調理師時代の宴会パーティーで天ぷら盛り合わせがあり、それを仕上げるために温度管理のされるフライヤーでの作業でした、約50個の帆立貝柱が揚げ終わり盛り付けするまではよかったですが、この後10分もすると水分の流失が起こり大きな皿にはベチャベチャに・・(泣)
慌てて取り替えた経験がありました
別の日には湯霜の帆立貝柱の残りを勿体無いので天ぷらにしましたが、こちらはある程度時間が経過しても先のような状態にはならず塩で食べてもジューシーさがありました
この経験があったのでドリップに関して考えるようになったのです
さて原因ですが、冷凍帆立貝柱という原材料としての条件で書きます
普通に天ぷらにしてすぐ食べるカウンター店なら特に気にする事ではないですが、宴席などまずまずの人数ではこれは叶いません
10名様のコース20名様のコースと多様にありますが、天ぷらってほんと時間との勝負なんです!
油から揚げた直後から(言い方悪いですが)劣化していく一方で、これをいかにしてお客さんに最高の状態で同時に出すことが出来るのか?です
これを可能にするのが
「先に火を入れてしまおう」作戦です
適温で旨みを逃さず、硬くさせずの理論は魚介類のタンパク質の凝固が始まる温度
40℃から始まり凝固して硬くなる〜70℃
までで食材の旨みを先にコントロールします
水に少量の酒と1.5%程度の塩を加えた湯で火を入れます、塩を入れることでタンパク質の溶解温度が上昇するので浸透圧で旨みを逃さないようにします、あとは酢またはスライスレモンなどは好みで入れます!!
貝柱を入れる前に先の合わせ湯を少し冷ましておいて貝柱を冷やすために用意しておきましょう、これでより火入れ温度帯をよりコントロールしやすくなります
帆立貝柱をこの状態で留めておいて、仕上げは衣だけ揚げるようにすれば、揚げすぎず、硬くなりにくく、油も汚れず、数十人分対応出来て、何よりお客さんに喜ばれると考えます
揚げる時の温度帯は少し高く設定しましょう(185℃前後で揚げます)
8割の経験則と現状を元に書いてますが、すぐに食べてくれない状況においては有効な手法でもあり、全体的なクオリティーは上がります
まとめ
昨今の外交状況で日本産の帆立貝柱の行き場が減っている現状、多く使えて、それほど管理が難しくない方法で「帆立貝柱の天ぷら」を提供してみましょう
温度管理の難しい天ぷらですがひと手間加える処理をすれば、天ぷらの難易度が下がります
衣だけ揚がるのを見極めれば多くのゲストに提供できるひと品になります
私が出来ることは発信だけですが、少しづつ力を合わせれば大河になります、食材と生産者の思いを繋ぐバトンを始めまてみませんか?
今回もありがとうございます
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